評価に関する研究
緑内障などは、点眼薬を正しく使用すれば効果が期待でき疾患の進展を抑制できるにもかかわらず、きちんと点眼せず薬物が投与されなかったり点眼が不十分だったために疾患の悪化をきたしたりする場合があります。
点眼アドヒアランス(きちんと点眼できるかどうか)と治療効果の間には関連のあることが知られているため、眼科疾患において薬剤師の役割は重要です。
そこで、患者さんの点眼アドヒアランスを向上させるために有効な薬剤師の活動に関する研究や、点眼アドヒアランスを確認できるデバイスの開発などの研究を行っています。
嚥下能力の研究
高齢者は、嚥下能力が低下して飲食物が飲み込みにくくなったり、誤嚥性肺炎を起こしやすくなったりすることが知られており、水やお茶にとろみをつけて飲むこともあります。
嚥下能力低下は食事だけではなく内服薬の飲み込みを通して、服薬行動にも影響を及ぼすことが考えられます。
また、とろみのついた水で薬剤を服用することも考えられます。
そこで、服薬に影響する内服薬と嚥下の関係を明らかにし、さらにとろみ剤と薬剤への影響を検証することで患者さんが安全で効果的な薬物治療を受ける方法についての研究を行っています。
考慮に入れた
個別化薬物療法に関する研究
薬物が効果を発現するためには、作用部位における薬物濃度を適切な範囲にコントロールする必要があります。
このために、血液中薬物濃度の測定(TDM)に基づく薬物療法が行われています。
しかし、血液から作用部位(組織)への薬物の移行は炎症反応などの様々な要因により変化することが知られており、TDMを行っても十分な効果が得られなかったり、副作用が発現したりすることがあります。
そこで、有効かつ安全な薬物療法を行うために、血液中薬物濃度だけでなく薬物の組織への移行性の変化についても考慮に入れた個別化薬物療法に関する研究を行なっています。
薬物によるめまい、ふらつきなどの神経系副作用は種類が多く、多くの薬物で発現する可能性があるため、モニタリングが難しく、マニュアルなども整備されていません。 そこで、薬剤師が神経系副作用についてどのように確認しているか(又は確認していないか)とどのようなマニュアルが必要なのかを調査し、現場で簡便に使用できるマニュアルの作成を目標とした研究を行っています。
医薬品の有害事象に関するデータベースには、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の副作用データベースが有名ですが、医療用医薬品に関する報告が多く、一般用医薬品や健康食品などによる有害事象についての報告は少ないのが現状です。
そこで、一般用医薬品や健康食品などによる有害事象を早期に発見するために、PMDA以外のデータベースを用いて一般用医薬品や健康食品の有害事象に関する研究を行っています。
過量服薬(オーバードーズ)は、自殺の方法として用いられる場合や何らかの苦痛から逃れる目的で行われる場合があり、若年層を中心に世界中で社会的な問題となっています。
これまでに、GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析)を用い過量服薬患者に対する気管挿管の必要性の判断のための研究によりガイドラインの不足部分を補うエビデンスの構築、意識障害患者のうち過量服薬患者の見分け(鑑別)方法、ハイリスク医薬品の毒性把握の指標作成と過量服薬に用いられる薬剤の客観的な毒性把握、過量服薬を示す新規な客観的スコアの作成などの研究を行っています。
また、過量服薬(オーバードーズ)や自殺に関するエビデンスを構築して活用することで、患者の兆候に気付き、傾聴できるゲートキーパーの養成を行っています。
OTC医薬品のヒトに対する毒性量を調査した以下のホームページのように、ゲートキーパーの手助けとなるようなデータベースなどの構築や解析を行い、公開しています。
「オーバードーズ防止のための薬剤データベース」(安全上の理由で登録必須)
https://overdose-med.com/
食事により体内に取り入れられたタンパク質は、消化酵素によりアミノ酸やペプチドに分解されます。 活性を持つペプチドは生体に対して作用を及ぼすことが明らかになってきましたが、まだ十分に解明されていません。 私たちはモデル動物や培養細胞株、ヒト免疫細胞を用いてペプチドの機能解析を行い、栄養素としての健康機能や病態への影響を検証しています。
千葉大学大学院薬学研究院 実務薬学研究室では、企業や他大学、医療機関との共同研究を積極的に行っています。 お気軽にご連絡ください。