教授挨拶
千葉大学薬学部製剤工学研究室は、1969年に初代教授の故仲井由宣先生のもとに発足した50年を超える歴史のある研究室です。1991年には2代目の山本恵司教授(現千葉大学名誉教授)が研究室を引き継がれ、様々な分野に多くの優秀な人材を輩出してきました。2014年4月からは、私が研究室を主宰しています。
研究では、仲井先生が“分子製剤学:Molecular Pharmaceutics”の概念を提唱され、 仲井先生から山本先生の時代まで一貫して分子製剤学的視点に基づいた研究が進められてきました。現在も「分子製剤学に基づいた難水溶性薬物の溶解性を改善する製剤の開発及びその物性評価」に関する研究を行っています。非晶質固体分散体、薬物ナノ粒子、薬物複合体(塩・共結晶・シクロデキストリン複合体)、多孔性物質(メソポーラスシリカ・有機ナノチューブ)といった製剤の性質とそれを服用した際に起こる現象に関して、固体状態の物性評価手法(粉末X線回折、熱分析、IR、固体NMR、蛍光測定など)と水に分散後の物性評価手法(Suspended-state NMR、SAXS/SANS、Raman、cryo-TEM、AFM測定など)を駆使して検討しています。最近では、薬物送達システム(DDS)で用いられる薬物封入リポソームや高分子ミセルの物性評価と体内動態との関連といった研究にも力を入れています。
研究室のモットーは、「自分で考え判断して行動する」です。研究室での生活には、共同生活をする上での最低限の決まりはありますが、時間の使い方などは基本的に自由です。もちろん自由には責任が伴いますので、それを理解した上での自立した行動が求められます。教員や他のメンバーとの活発な議論を通じ、研究室のメンバーそれぞれ自分がやるべきことを理解し、目標に向かって日々の努力を重ねることで成果に結びつけることを目標としています。
研究室には、留学生や社会人博士課程の学生が在籍しています。留学生の存在は日本人学生の英語力の鍛錬に加え、異文化への接し方や理解も深められます。さらに、ゼミや学会、論文発表会での英語による発表を通じて、物怖じせず英語を使える人材を育成します。また、社会人博士課程の学生との交流は、企業研究の理解に加え、企業で働く人の考えを直接聞くことができます。学生には今いる環境を積極的に利用して、自己研鑽に励んでもらいたいです。
科学技術の進歩は著しく、測定技術も日々進歩しています。これまで測定・評価が困難であった試料が、装置の進歩により今後測定が可能になるかもしれません。「製剤に関する疑問を解き明かす面白さ」は、研究を始めてみれば必ず実感できると思います。仲井先生、山本先生から受け継いできた教育研究の理念のもと、今後もみんなで地道に楽しく教育研究活動に邁進していきたいと思います。