logo千葉大学大学院薬学研究院薬品物理化学研究室

Research

テーマ1:動的構造解析に基づくタンパク質の機能解明

タンパク質は、固有の立体構造を形成することで機能を発揮します。我々は水溶液中におけるタンパク質の動きを捉えることのできる核磁気共鳴法や、タンパク質の精緻な立体構造を決定することのできるX線結晶解析法、また近年技術進歩の著しいクライオ電子顕微鏡などの構造解析手法を利用して、タンパク質の機能解明を行っています。

細胞接着因子CD44の解析では、CD44はリガンドであるヒアルロン酸に対して低親和性のO-stateと高親和性のPD-stateの間を数百ミリ秒のオーダーで交換する構造平衡状態にあることを明らかにしました。また、この構造平衡を制御した変異体を作成し、CD44がリンパ球のローリングを達成するうえで構造平衡の存在が必須であることを明らかにしました(Structure 2010, Proc Nat Acad Sci USA (2015))。

細胞内のモータータンパク質である細胞質ダイニンの微小管結合ドメイン(MTBD)の解析では、MTBDは微小管に対して低親和性のβ状態と高親和性のsemi-α状態の平衡にあり、微小管結合状態ではまた別のα状態をとることをNMR法とクライオ電顕を組み合わせた構造解析から明らかにしました。ダイニンMTBDは3つの異なるコンフォメーションが存在することでダイニンはATPの加水分解反応と連動した微小管上の運動を達成するモデルを提唱しました(Nat Commun (2020))。

テーマ2:細胞内タンパク質のNMR観測

細胞内は多種多様なタンパク質が高濃度で存在する分子混雑環境であり、タンパク質の構造や活性に影響を与えます。細胞内で機能するタンパク質の「真の姿」を捉えるために、我々は細胞内NMR計測法(In-cell NMR法)の開発に取り組んできました。これまでに安定同位体標識タンパク質を哺乳細胞内に導入する手法(JACS (2009))や、バイオリアクター装置の開発(Angew Chem Int Ed (2013))を行い、細胞内タンパク質の活性をリアルタイムに観測する方法を確立しました。

細胞内タンパク質のリアルタイム観測の応用例として、代表的な低分子量GTPaseであるRasのin-cell NMR観測を行いました。Rasは不活性型のGDP型と活性型のGTP型の間で交換することで活性が制御されており、Rasを恒常的に活性化する変異は多くのガンを引き起こします。細胞内Rasの活性型割合は試験管内(in vitro)での計測値よりも顕著に低下しており、その原因として分子混雑環境や内在性タンパク質によってRasのGTP加水分解活性の上昇とGDP-GTP交換速度の低下が引き起こされるという新たな制御機構を明らかにしました(Cell Rep (2020))。

テーマ3:計算科学に基づく阻害剤のデザイン

作成中

PAGE TOP