教育概要
薬品物理化学研究室では、薬学部総合薬品科学科における専門科目、大学院医学薬学教育府の講義、ならびに全学部の普遍教育等を担当しています。
学部専門科目
- 物理化学I
薬学の特徴の一つは「医薬とその働きを分子レベルで明らかにする」ことにあります。医薬品の多くは、有機あるいは無機化合物として分子を形成しています。複数の原子が結びついて、分子が形成していられるのは、電子の介在があるからです。従って、この電子の振る舞いが分かれば、化合物の性質はすべて理解できるはずです。電子の振る舞いを知るためには、「量子力学の基礎方程式」であるシュレディンガー方程式を解くことは、最も直接的な方法であるので、物理化学Iでは,このような考え方に基づく化学の入門講義を行っています。さらに電子や化学結合を原子、分子、金属錯体と大きな系に移行して取り扱います。また、分子の形が錯体にある中心金属の反応性に影響する影響を理解します。ここで学んだ知識は、有機化学・生物無機化学・分析化学な電子や化学結合を原子、分子、金属錯体と大きな系に移行して取り扱います。さらに、分子の形が錯体にある中心金属の反応性に影響する影響を理解します。ここで学んだ知識は、有機化学・生物無機化学・分析化学など薬学のさまざまな分野に形を変えて現れます。
- 物理化学III
化学変化の方向は熱力学、とくにエントロピーやエンタルピーの概念で理解できます。物理化学IIIでは最初に気体や溶液などの巨視的な分子集団の性質を取り扱い、その性質が個々の粒子の挙動からどのように発現してくるかを解説します。さらに特定の分子にも注目し、分子間での相互作用について紹介します。分子を結びつける相互作用は強いものから弱いものまで多様でありますが、量子力学的基礎方程式によれば、これらの分子間相互作用は等価であり、統一的に扱うことができます。自然を理解するためのこのような総合的思考能力を養うことが物理化学IIIの目的です。
- 薬品物理化学
分子はその化学構造と電子構造の特徴により独自の情報を持ちます。薬物受容体のひとつである酵素の活性部位にはしばしば金属−配位子構造がみられます。とりわけ、金属イオンは電子構造の複雑さから生体分子の必須成分として多様な機能を発揮します。そこで、薬品物理化学Iでは,まず生物無機化学の立場から鉄イオンや酸素分子の性質を解説します。さらに、「量子力学の基礎方程式」を駆使した理論により、薬物−受容体相互作用取り扱う方法を紹介します。後半では理論を紹介するだけでなく、コンピューター演習を通じて、計算機やソフトウェアの利用法にも習熟できます。
- 物理化学実習
薬物分子や投与薬物と相互作用する生体分子の物理化学的性質を理解することは重要です。本実習では薬物分子、アミノ酸、たんぱく質の物理化学性質を測定するとともに分子情報理論を学びます。そのため、凝固点測定から希薄溶液中の溶質の溶媒の相互作用を調べます。また、加水分解反応速度の測定、実験結果の解析、および反応速度定数の温度依存性から活性化エネルギーを求める方法を学びます。薬物分子や生体分子は生体内部で特異的に反応して特徴的に機能を発現するのは、これらの分子構造の中に固有情報が潜むためです。分子の特異的立体構造に存在する固有情報を明らかにするため、コンピュータを利用して分子の電子構造や反応性を原子・電子のレベルで解析して理解する方法を習得します。
大学院講義
- 物理薬学
たんぱく質やモデル化合物に結合した薬物分子類の情報発現機構について、物理化学方法論を基礎事項から研究最前線まで取りあげます。その対象として、金属原子をふくむヘムたんぱく質を紹介し、補欠分子族である鉄ポルフィリン錯体による鉄原子の反応性制御および酸素結合機能への影響について講義します。また、酵素の基質結合部位モデルとしてシクロデキストリンを例にして薬物分子との複合体構造解析を紹介します。さらに、たんぱく質の立体構造予測など薬学研究における計算化学の活用法について講義しています。
- 創薬情報科学
生命情報あるいは化合物情報を活用して創薬に生かすための知識を与える講義内容です。公的研究機関あるいは製薬企業の研究者を講師に迎えて、最先端の創薬インフォマティクスに関する話題を提供頂いています。タンパク質シミュレーションの医薬への応用を念頭に、公的研究機関に勤める研究者の方々に講演をお願いしています。さらに製薬企業での計算機利用例の紹介として、医薬品開発に携わる製薬企業の研究者の方々をお招きして、最新の創薬技術について講演を頂いています。系統講義として、生命情報科学という科目とも密接に関連しています。
全学普遍科目
- 基礎化学B
現代科学の考え方に基づいた化合物の分析方法、酸塩基の性質、物質の平衡と反応などについて、基礎的な事柄を講述します。実生活と化学との関わりにもふれることにより、化学的物質観に慣れ、各専門科目への基礎固めをします。
- 情報処理
電子計算機の演算性能の向上により、コンピューターは薬学分野の研究において欠くことのできない道具となりました。さらに,数値計算のみならず、一般に情報と呼ばれる文字、文章、画像などを処理する装置としても普及しています。この授業では薬学への応用を念頭に、コンピューターによる情報処理の方法について学び、実習を通じて、情報処理能力を養うための学習をします。
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